ローゼ姉さんのドイツ語講座第19回「話法の助動詞」

 

Lektion 1

話法の助動詞の種類

……なんのひねりもないタイトルね。

ともかく、まずは「話法の助動詞」ということの説明から。

と言っても、「話法の」とかややこしいこと書いてるだけで、普通の「助動詞」のことだから、そんなに難しく考える必要ないから安心してね。

じゃあ、その「助動詞」って何よ? って話だけど、……そうね。簡単に言うと、「元の文章のニュアンスをちょっと変える」って感じかしら。

もうすでにやった現在完了だと、「現在形の文章を過去のものにする」って感じだったわね?

未来形だと、「現在形の文章を、意志や命令、推量をあらわすものにする」って感じね。

同じように、話法の助動詞も「元の文章に話し手の主観や客観的叙述を付加する」って感じなの。

 

さて、先週の最後に、「完了形や未来形のsein/habenは助動詞」って言ったわね?

これからやる話法の助動詞の構文も、完了形や未来形と全く同じになるわ。……そう、ワク構造ね。

しかも、今回の文章には特に「ワク構造」が顕著に出てくるから……作者がこの辺りをやってるときに感じたのは、「まるでパズルだ」とのこと。

 

このことを踏まえて、とりあえずどんなものがあるのか、並べてみることにするわ。

まずは「könen」。

これは、英語の「can」にあたる助動詞で、基本的には「〜出来る」っていう可能の意味を表すわ。

ただ、文章によっては「〜なのかもしれない」っていう推量を表すこともあるから、一概に「〜できる」だ! なんて言えないんだけどね。

この辺りは、英語の「can」がどういうときに使われるか知っていたら、なんとなくわかると思うけわ。

 

次は、「müssen」。

今度は、英語の「must」にあたる助動詞ね。これは、基本的には「〜しなければならない」って意味になるわ。「können」の「可能」みたいな言い方をすると、こっちは「必然性の主張」って感じかしら。

もちろん、「müssen」も日本語にぴたりと来る訳語があるわけじゃなくて、「〜に違いない」「思わず〜してしまう」って意味にもとることが出来るから、きちんと文脈を読み取ること。いいわね?

 

次は、「dürfen」。

これは、英語の「may」にあたるかしら。

基本的な意味は、「〜してもよい」という「許可」ね。ただ、これは否定文では「〜してはならない」っていう「禁止」の意味になるから、覚えておいてね。

他の助動詞だったら、否定文のときはたいてい「〜というわけではない」という文言を後ろにつければ、なんとなく同じ意味にはなるんだけどね……。コレばかりは憶えてもらわないといけないわ。

 

4つめは、「mögen」。

一応、これも英語の「may」にあたる助動詞で、「〜が好きだ」って意味でよく使われるんだけど、かなり厄介な単語なのよねぇ……。

そもそも、これは「mögen」で使われることがあまりないの。形を変えて、「möchte-」と使われることがほとんど。この場合の意味は「〜がしたい」「〜がほしい」ね。

……でも、これは「接続法第U式」っていう使い方で、あとで少しだけ使い方をやるけど、詳しくは第28回あたりにやる「接続法」のときにやるから、今は気にしなくてもいいわよ。

一応、あまり使われない意味として、無関心な許可「〜するがよい」「勝手に〜すれば?」。

可能性・推量「〜だろうか」。

認容「たとえ〜だとしても」。

願望・懇願「〜したい」「〜でありますように」。

……まぁ、これらはいちいち憶えなくても、その都度引っかかったら辞書を引くという方向で行きたいと思うわ。どんどんカオスになっていくし。

 

続いて、5つめは「wollen」。

意味としては、「〜するつもりだ」っていう「『主語』の意思」を表すの。

英語で対応する語は「want」「will」「wish」ね。

ポイントは、「主語の意思」ってところよ。実は、似たような意味の助動詞が、もうひとつあって、それとややこしいからあえて強調したわけ。

wollen」の他の意味は、直前性や気配を示す「今にも〜しそうだ」があるわ。これは否定されるとがらりと意味が変わって、「なかなか〜になろうとしない」になるの。本当に、逆になるわけね。

 

最後の助動詞は「sollen」ね。

英語では「shall」「should」「ought to」にあたる単語で、「〜すべきだ」っていう「『主語以外』の意思」を表すわ。

これが、「wollen」のときに説明した「似たような意味の助動詞」よ。まぁ、意味の上では「mogen」ともそっくりなんだけど、こっちの方がより「命令」に近いニュアンスね。

他にも、「sollen」には「〜するように求められている」とか「〜という噂だ」って意味もあるから、ちょっと注意が必要よ。

 

……と、流して説明したけど、今ので覚えられなかった人は、作者のブログにまとめたものをアップしておくから、2窓で確認しながらお願いするわ。

 

というわけで、次は構文に入るわね。

 

 

Lektion 2

話法の助動詞の構文

 

レクツィオーン2は、助動詞の文の作り方。さっきも言ったとおり、ワク構造になるわ。

助動詞が2番目に来て、元々の動詞は最後に不定形で現れるの。

……と、これだけならまだマシなんだけど、完了形や未来形では、「sein」「haben」「werden」は人称変化をしたわよね?

……そうなのよ。これらの助動詞ももちろん人称変化するわけ。

今からさっき挙げた6つの助動詞の変化の表を示すから、しっかりと見ること。いいわね?

不定形

können

müssen

dürfen

mögen

wollen

sollen

人称\

ケネン

ミュッセン

デュルフェン

メーゲン

ヴォレン

ゾレン

ich

kann

muss

darf

mag

will

soll

カン

ムス

ダルフ

マーク

ヴィル

ゾル

du

kannst

musst

darfst

magst

willst

sollst

カンスト

ムスト

ダルフスト

マークスト

ヴィルスト

ゾルスト

er

kann

muss

darf

mag

will

soll

カンスト

ムス

ダルフ

マーク

ヴィル

ゾル

wir

können

müssen

dürfen

mögen

wollen

sollen

ケネン

ミュッセン

デュルフェン

メーゲン

ヴォレン

ゾレン

ihr

könnt

müsst

dürft

mögt

wollt

sollt

ケント

ミュスト

デュルフト

メークト

ヴォルト

ゾルト

sie

können

müssen

dürfen

mögen

wollen

sollen

ケネン

ミュッセン

デュルフェン

メーゲン

ヴォレン

ゾレン

 

一応、現在人称変化なんだけど、1人称と3人称の単数において語尾がつかないで、あとは「-, -st, -, -en, -t, -en」の形になってるわ。……そう、過去変化のときと同じ語尾よ。

他にも、単数形のときには語幹が変わるの。

ich

möchte

メヒテ

du

möchtest

メヒテスト

er

möchte

メヒテ

wir

mochten

メヒテン

ihr

möchtet

メヒテト

sie

möchten

メヒテン

ちなみに、「mogen」のときにやった「mochte」も、同じような変化をするから憶えておいてね。

じゃあ、次は過去基本形と過去人称変化ね。

不定形

過去基本形

können

konnte

müssen

musste

dürfen

durfte

mögen

mochte

wollen

wollte

sollen

sollte

話法の助動詞の過去人称変化は、普通の動詞の過去人称変化と同じね。これは憶えやすいわ。

最後に、3基本形といえば過去分詞だけど……話法の助動詞には過去分詞が2種類あって、場合によって使い分けることになるわ。

過去分詞

 

 

不定形

(助動詞)

(本動詞)

können

können

gekonnt

müssen

müssen

gemusst

dürfen

dürfen

gedurft

mögen

mögen

gemocht

wollen

wollen

gewollt

sollen

sollen

gesollt

「助動詞」としての過去分詞は、不定形と同じね。「本動詞」としての過去分詞は、規則変化の「ge-t」型になるわけ。

使い分けについては、レクツィオーン3でやるから、今は「2種類の過去分詞」とだけ頭の片隅に置いておいてね。

 

さて、例文を見てこうかしら。

Sie kann sehr gut Auto fahren.

(彼女はとても上手く車を運転することができる。)ゆい姉さん

Ich will unbedingt in Deutschland studieren!

(私はどうしてもドイツに留学したいんです!)サラ

Ach, bis Morgen muss ich wieder ein Referat schreiben...

(ああ、明日までにまたレポートを書かなくてはならない。)

Da ich deine große schwester bin, ich darf Brudi auf seinen Wuchs überprüfen, oder?

(姉として、弟くんの成長を確かめてもいいよね?)

Wenn mein Wunsch jetzt gewahrt wird, soll ein Paar des weisen Flügels an meinem Rücken befestigt sein.

(今私の願い事が叶うならば翼がほしい)

Er will nicht arbeiten.

(彼は一向に働き始めようとしない。)

Weil ich unbedingt alle schutzen will, muss ich die Macht bekommen!

(あたしは誰も傷つけたくないから、強くならなければならないんです!)

Ich möchte ein Eis essen.

(アイスが食べたいな)

 

……っと、こんな感じ。

話法の助動詞の使い方は、本当にいっぱいあるから、出来ればドイツ語学習のテキストや辞書を購入して、自分でやってみることをオススメするわね。……というか、こんな10分前後の動画じゃ、紹介しきれないし。

ここで憶えておいてほしいのは、助動詞の文はワク構造になるってことね。

あと、話法の助動詞は過去完了や未来形の助動詞「sein, haben, werden」とも一緒に使われて、そこでもワク構造を作るの。

3基本形で紹介した、「助動詞としての過去分詞」ね。

 

Ich habe früher dises Rätsel lösen können.

(前ならこの問題解けたのになぁ)

 

さて、じゃあ次は「本動詞としての過去分詞」っていう2つ目のやつが出てくる使い方ね。

 

 

Lektion 3

本動詞としての話法の助動詞

 

……また随分とわけのわからないレクツィオーン名だけど、まぁまずはみんな日本語で考えてみて。

 

「私はドイツ語を話すことが出来ます」

「私はドイツ語が出来ます」

 

この2つの違いは何かしら?

……そうね。「出来る」って語が直接「ドイツ語」って語と結びついているかどうかね。

こんな風に、日本語は助動詞の役割を果たす動詞が、「動詞そのもの」として使うことができるわけ。

そして、このドイツ語でも、「本動詞」として使うことが出来るの。

これから、いまの例をドイツ語にしてみるわね。

 

Ich kann Deutsch sprechen.

Ich kann Deutsch.

 

……と、どちらも意味は同じになるのよ。

上は「助動詞」として使った場合で、下は「本動詞」として使った場合ね。

 

さて、ここで「過去分詞が2種類」ってことが解決するわけ。

「本動詞としての過去分詞」として紹介した「ge-t」型の過去分詞は、こういう文章の完了形で使われるの。

 

Ich habe Deutsch gekonnt.

(私はドイツ語が出来た)

 

 

 

 

さて、今回はコレで終わり。

正直、きちんと説明しきれないところが多いから、辞書持ってる人は単語の補足説明をちゃんと読んでね。

……辞書持ってない人は……ごめん、対策が思いつかないわ。

まぁ、文法的なところは、このくらいで、次回からまた先に進むんだけど……今回説明し切れなかったことはきちんと考慮するわね。

 

次回の予定としては、分離・非分離動詞の説明をやるつもりよ。

これで、とりあえずはドイツ語の文章で「謎」な動詞はなくなるわね。

というわけで、お疲れ様。

Tschus!