たかね「はじめまして。わたくし、たかねと申します」 P  (……うーむ。思わず目を背けたくなるくらい、気品に溢れてる。すごいオーラだ) P  「えーと、よろしく。俺が君のプロデューサーだ。えーと……たかね、さんは……」 たかね「たかね、で結構ですわ」 P  「あ、そ、そうですか……じゃあその、たかねは……ハーフなの?」 たかね「クォーターです。母方が北欧の血を受け継いでおります。……クォーターのアイドルは、変でしょうか?」 P  「いや、そんなことないと思うよ。むしろその部分を押し出して売っていける」 たかね「ありがとうございます」 P  「えと、それから……いくつくらい? 見たところ高校生って感じだけど……」 たかね「あら、初対面の女性に年齢をお聞きになるなんて……なかなか大胆ですわね」 P  「え!? あ、す、すみません……」 たかね「くすくす、冗談ですわ。17歳です」 P  「は、はぁ……ありがとうございます」 P  (……なんで敬語になってるんだ、俺?) P  「えと、たかねは……どうしてアイドルに?」 たかね「高木のおじさまとの縁で……スカウトされましたの」 P  「え? 社長と知り合いなの?」 たかね「はい」 P  「ご家族は、なんて?」 たかね「高木おじさまは父と母とは深い知り合いなので……安心して預けられる、と申しておりました。     父は、わたくしにもっと広い世界を見てきなさい、と」 P  (社長も色んな知り合いがいるもんだなぁ……) P  「特技とか、ある?」 たかね「幼少の頃から、バレエとピアノを嗜んでおります」 P  「へえ! それじゃ、ダンスのセンスと音感は抜群じゃないか」 たかね「いえ……少々かじっている程度ですわ。お恥ずかしい」 P  (謙遜だなぁ……おしとやかで、非の打ち所がなさすぎる……     ……うーん。本当に俺なんかがこんな娘をプロデュースしてもいいんだろうか) P  「…………」 たかね「…………」 P  (……うう、沈黙が痛い。こんな育ちのいい娘と話したことないからなぁ……何か話題は……) たかね「あの……」 P  「は、はい!?」 たかね「“あいどる”とは、一体何をするお仕事なのでしょうか?」 P  「……え? 知らない……の?」 たかね「はい。存じ上げておりません。家に“てれび”がないものですから) P  (……“あいどる”に“てれび”ね。イントネーションが変だ。本当に知らないのか……) P  「えーっと、アイドルってのは……簡単に言うと、つまりテレビ番組に出て、歌ったり踊ったりする人のことだね」 たかね「あ、あら……それは、少しはしたないような……」 P  「は、はしたない、ですか……」 たかね「えぇ……わたくし、人前でそのようなことはしたことありませんので……」 P  (箱入り娘と来たか……) P  「そ、そう……あー、で、でもさ! その――」 P  「――それならなおさらだ。たかねはこのままじゃ狭い世界しか知らないままだ。これを期に、もっと広く世界を見つめてみない? きっと良い経験になると思う」 たかね「……そうですわね。わたくしも、自分が世間知らずなところは自覚しておりますので……」 たかね「ありがとうございます。これから、ご指導ご鞭撻のほど、お願いしますわ。プロデューサー様」 P  「あ、いえいえ……こちらこそ」 P  (どうやらその気になってくれたようだ。……しかし、プロデューサー“様”、かぁ……。     まさしく高嶺の花、って感じだなぁ……たかねだけに)